現場体験ワークショップ@熊本県立美術館 を開催しました
2月の長崎に続いて、3月10日は熊本で現場体験ワークショップを開催しました。熊本での現場体験ワークショップは2回目で、2023年には熊本県立劇場で実施しています。今回は熊本県立美術館さんにご協力いただきました。
**現場体験ワークショップとは**
障害のある方と一緒に文化施設を巡って、一緒に楽しむためのコミュニケーションや配慮の仕方について、実践的に学び合うワークショップです。劇場や美術館などの文化施設と支援センターのご協力を得て、九州各地で開催しています。
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参加者は、熊本県立美術館の職員さん約10名のほか、熊本県立劇場の方や福祉施設の方など。ユーザー(講師)として車椅子利用者の方、視覚に障害のある方、聴覚に障害のある方とそのサポーター(介助者)の方にお集まりいただきました。
熊本県立美術館は、前川國男設計の築50年になる重厚な雰囲気のレンガや吹き抜けの空間がとても素敵な建築です。
ですが50年前というと、バリアフリー法ができるずっと前。エレベーターの設置やトイレの改修、サインの見直しなどさまざまな工夫をされていましたが、建物自体も美術品であるため、大きな改修も難しいそうです。
とはいえ、このワークショップの目的は「ここがバリアフリーじゃないですよ!」と指摘することではありません。障害のある方と一緒に美術館を回って、「ここはちょっと使いにくいのかな?」と気づいたり、「こんなときどうしているんですか?」「どんな助けがあるとありがたいですか?」といった素朴な疑問に対してユーザーの方と率直に意見を交換したりすることで、一緒に美術館を楽しむ方法を考えていくことを目的としています。
車椅子ユーザーの方にいろいろと質問しながら、参加者も美術館の貸し出し用車椅子に乗って体験します。段差があってもスロープがあるから大丈夫かな?と思っていても意外と角度が急だと感じるところや、この高さは見やすい?見づらい?など、実際に体験しながら小さな「気づき」を積み重ねていきます。
普段の生活では、指を指しながら「次はあっちに行きましょう」と言うことがあるかもしれませんが、目の見えない方にとっては指が見えないので分かりません。一緒に行動するときは、右、左、あるいは「3時の方向に」という言い方が分かりやすいということを、当事者の方から教えていただきます。
耳の聞こえない方のサポーターとして手話通訳の方にお越しいただいて意見を交わします。美術館では視覚情報が多いので、耳の聞こえない人の不便は少ないようにも思われますが、学力の度合いもさまざまなので作品の解説などにはルビがあると有難いというのも新鮮な発見になりました。
館内での体験ワークのあとは、グループごとに「気づき」と「これから」を考えて発表する共有ワークです。
参加者の気づきシートとこれからシートに書かれたことを抜粋して紹介します。
【気づきシート】
・それぞれの障害の程度によって必要な介助が変わってくること。
・初めての場所はわからないことが多い
・「聞いてもらえれば」の大変さ。ハードル
・車イスユーザーでも、人によって高さが異なったりして不都合に思う箇所がちがう
・介助者が異性の場合、多目的トイレの方がありがたい。
・点字ブロックは車いすの動線をふさいでいたり、何かを改善するとそれが別の問題を生むのかもしれない
・実際に(車イスユーザーとして)その身を体験することは非常に重要だと思いました。特に、障害者用スペースがこんなに使いにくいとは・・・
・障害を持った方にわかりやすいは自分たちにもわかりやすい。
・障害のある人がコミュニケーションに遠慮して我慢しているのは違うことだ。思いっきり外出することを楽しんでほしい。
・災害時等放送などではわからない人もいるのでみんながわかるようなものが必要だと思う。
・多様性という言葉が世間にたくさん流れているが、障害に対して気付かず壁を作っているのはどっち側だ(私だ!)と気付かされた。
【これからシート】
・美術館内をまわりながら、それぞれの意見や体験談を聞くことができ、とても勉強になりました。楽しみながら取りくむことができました!
・自分の館がどういう場所なのか、何が足りないのか、気づくきっかけになりました。
・ハード、ソフト面でいろんな気づきがありましたが、明日からでも対応できる様な簡単に解決出来るのでは?と思われることもありますので、早速対応可能か否か検討できると思います。
・聴覚障害を持った方にとって美術作品は見たらわかる部分が多いと知れた。だからこそルビや表示、音声案内などのピンポイントな問題点が浮き出てきて、どうやって対応できるのかを考えたい。
・玄関での受付時などにもいろんなん障害を持つ方も来られるので伝え方も必要だと思った。
・積極的に自分からコミュニケーションを取っていくこと。
・声をかけてみようご迷惑なら引けばいい。断られてもOK。気にかけてくれる人がいたんだという安心になる。
・当たり前の環境が全員が使いやすいわけではなく、いかに多角的な視点、立場で見ることが大切
・普通に何気なく気楽に外出してもらうには何をしたら良いのか考えていきたい
ユーザーの方のコメントで印象的だったことは、ハード面の設備(スロープ、点字ブロック、アプリなど)はあくまで補助ツールで、一番大切なのは人的対応であるというものでした。
「これから」を考えたときに、明日からでもできそうなこと、数ヶ月以内にできそうなこと、数年かけないとできないこと、さまざま見えてきたように思います。
また、視覚に障害のあるユーザーさんからは以下のようなコメントいただきました。
「視覚障害者は手のかかるイメージがあると思いますが、本人ができることは、はじめの一歩だけ手を貸してもらったあとは、本人にどんどん任せてください。過度に気を遣わず晴眼者と同じように接してもらえたらと思います。とても楽しい時間でした。」
車椅子ユーザーのお二人からは以下のようなコメントをいただきました。
「自分の役割として自ら公共のバリアー体験を皆さんに公表するのではなく、一緒にバリアーを体験し参加者自らそれに気付き、解らない事はその場で説明し理解してもらうと言うような今までに中々無い自分には新鮮な体験となりました。(中略)積極的に参加者の皆さんが自分に質問してくれた事が印象に残っています。他にも、参加されたユーザーの方で聴覚障害の方、視覚障害の方達の中々聞けないバリアー体験も聞く事ができました。」
「グループで美術館内を回り美術館職員3名の方が実際に車いすに乗り、館内を移動する体験をされました。普段の立っている目線とは異なる車いすの目線で館内を回ることで、段差や通路幅、スロープの勾配や長さ、展示物の高さなど、これまで気づきにくかった環境への気づきの声が多く聞かれました。その一つ一つの言葉を聞くたびに、車いすユーザへの理解が広がっていることを感じ、とても嬉しく思いました。これまで障がいを個人の問題として捉える医学モデルの視点が中心になりがちでしたが、今回の体験を通して、環境や社会のあり方に目を向ける社会モデルの視点を共有できたように感じています。今回の体験が、誰もが安心して文化や芸術を楽しめる美術館づくりへつながることを期待しています。」
ご参加いただいたみなさん、ご協力いただいた熊本県立美術館さん、本当にありがとうございました。
今回は熊本で2回目の開催で、前回実施した熊本県立劇場の職員の方が再び参加してくださいました。同じ内容でも違う施設で体験することで新鮮な発見がたくさんあったとのことで、このワークショップの意義を再認識できました。
今後もさまざまな場所で現場体験ワークショップを開催していきたいと思います。






