「アートサポーター養成講座 レクチャー&相談会@鹿児島」を開催しました

12月3日、鹿児島県でアートサポート養成講座「レクチャー&相談会」を開催しました。
2018年から毎年開催して3回目となる鹿児島県での今回の講座は、障害のある人たちの芸術活動をどのように地域に結びつけていくのかということについて考え、学ぶことを目的として開催。
新型コロナウィルスの感染症対策によりハイブリッドでの開催で、福祉関係者や行政関係者、医療関係者、ライターの方など会場参加オンライン参加合わせて総勢15名の方にご参加いただきました。
ゲストには、障害者芸術文化活動普及支援事業の推進官である大塚千枝氏とSANC(佐賀県芸術活動支援センター)の大石哲也氏、嵯峨昌紀氏をお迎えして、厚労省事業の目的や現状、支援センターの活動事例について詳しくお話しを伺いました。

 

まずは大塚さんより厚生労働省における障害者の文化芸術活動に関する取り組みについてのお話しからスタート。
厚労省が文化活動に取り組んでいるということを知らないという方も多い状況の中、なぜこういった取り組みを始めたのか、いつから始まったのか、どんなことをやっているのか、考え等を丁寧に説明しながら、具体的な施作や事業について紹介いただきました。
厚労省の事業の1つ「障害者芸術文化活動普及支援事業」における支援センターの必要性や役割については、先日宮崎県で開催された国文祭・芸文祭の事例を取り上げながら説明。
・支援センターは民間と行政を繋ぐという役割も大きい。
・支援センターの在り方は地域により様々な形があるが、福祉分野と芸術分野を連携させて未来を描きながら取り組んでいくことが求められている。
・地域を巻き込みながらネットワークを作っていくことが大切。
等、事例から学ぶことは多く、鹿児島のこれからにも繋がる時間となりました。

 

次に、佐賀県の支援センターを運営されている大石さん、嵯峨さんより支援センターでの取り組み事例についてお話いただきました。
佐賀県芸術活動支援センター(SANC)は、2012年に開催された「第12回全国障害者芸術・文化祭さが大会」を皮切りに、佐賀県独自でスタートした多様な芸術文化の祭典が毎年開催されるようになった流れの中で、社会福祉法人はるを母体として2017年に設立されました。
アトリエスペースや作品の展示スペースも併設されており環境を活かした活動を日々行われているSANCですが、設立当初は佐賀県内で障害のある人たちの芸術活動はほとんど行われておらず、専門的知識やニーズもわからず、手探りの状況から始まったそうです。

そんな中まず最初に行ったのは、活動拠点であるアトリエを構えることとアンケート結果を分析して地域の実情とニーズを分析すること。
今回は、立ち上げ時のこのような状況から芸術活動を行なう土壌をどのようにして創り上げていったのかという点についてより詳しくお話しいただきました。
SANCは、活動を進める上で「視野を広げる、一歩目を踏み出す」「表現の発信」「ネットワークづくり」という3つの柱を設定。この柱を軸にバランスを取りつつ、アンケートや地域の事業所への聞き取りから丁寧に現状とニーズを分析しながら地域に密着した活動を行なっています。

近年では、県全体で地域の芸術活動の場を作っていこうという動きや求められるニーズの変化から活動が成果へ繋がっていることを実感することも増えているとのこと。
支援センターとしての丁寧で地道な活動が、県全体の動きを作って切り開いているのだなと感じました。

 

 

続いて当センター長の樋口からは広域センターの取り組みについて話をしました。
センターの母体であるNPO法人まるは、福祉事業所として立ち上げた当初から“生活していく上で豊かになる、繋がるためのツール”として一貫して物作りを行なってきました。障害のある人も生きやすい社会にするために、自分で選択できる環境をいかに作っていくかということを目指し、社会が抱えるおかしさを問い続ける活動を行なっています。
また、広域センターとしての活動も根底にあるのは変わらず“本人が本人らしく生きるための社会づくり”。このために、支援者や事業所、文化施設、行政などを対象に様々な企画を行っています。
芯にあるのは、取り巻く環境を変えるということ。
人が動けば街が動き、街が動けば行政が動く。個々の横断的なネットワークを作り声をあげることで、街の課題として全体が動く流れを作る。
鹿児島での今回のこの場がそのきっかけになればと思います。

 

その後は、参加者の皆さんとのディスカッション。
参加者の皆さんからは、横のつながりの薄さや周りの理解が得られないことへの悩みや、地域展開の難しさ、情報発信・収拾の難しさについての悩みなどが出てきました。
ここから出てきたのは、“横断的なネットワーク“の構築が何より必要なのだということ。
そのためには課題の共有ができる小さなコミュニティを作ることが大切で、まずは地域で身近な発信をして繋がっていくことが大切。
また、これから動きたいと考えている皆さんに対して、全国各地いろいろな場所で既に実践している方達が創り上げたものに乗っかって、活かしていくことも大切。新たに始めることから芽が出てくるのは時間がかかるもの。既にあるものを活かしていくことがこれからのより良い社会に繋がっていく。というアドバイスが出るなど、意見や考えが飛び交い、改めて“横断的なネットワークの構築”の必要性と大切さを感じる時間となりました。

参加者の皆さんからは

・改めて自分が今日聞いた内容や調べて発信できる内容を当事者の方や施設の方に伝えていくことが何よりも大事だと感じました。
・鹿児島にセンターを作る為に動き出す観点やポイントを得られる貴重な機会となりました。
・多職種、他分野とのつながりを積極的に作り「福祉」の枠をなくせるような文化芸術活動を行っていくことで、世の中の「障害観」を変えていきたいと改めて思いました。

等の感想をいただき、鹿児島県でこれまで積み重ねてきたものがしっかりと根付いていっているのを感じました。
今後も定期的に、情報を共有しながら繋がる場を創っていきたいと思います。

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