「障害のある人たちの表現活動における著作権セミナー」を開催しました。

2月3日に熊本県総合福祉センターにて「障害のある人たちの表現活動における著作権セミナー」を開催しました。障害のある人たちの表現作品に価値を見出す人が増え、作品の売買や商品化といった商業的な需要も生まれたことで、障害のあるアーティストの著作権の問題が顕在化しました。今回のセミナーでは、様々なシーンを想定したシミュレーションを行いながら、そこで生まれる権利について学びました。

講師にお招きしたのは弁護士の辻哲哉さん。NPO法人エイブル・アート・ジャパンの理事でもある、障害のある人のアート作品を仕事につなげる著作権の実務を支援されています。
今回は初めての熊本県での開催となり、障害者支援施設の職員をはじめとした30名が集まりました。

最初に参加者に配られたのは「事例編」と「資料編」の二つの資料。事例編には著作権にまつわる様々なシチュエーションの事例が書いてあります。
購入した画集を他の人に捨てられたら・・・?
勝手に作品の写真を撮ってインターネットにあげていいの・・・?
作品の画像をTシャツにプリントして販売するときは、誰の許可が必要・・・?作品の構図や色彩に手を加えてもいいの・・・?
といった障害のある/なしに関わらず起こりうる問題を考えて、資料編に沿って「著作権」「所有権」「著作者人格権」などの法的な権利について学ぶ、という流れです。

大まかな理解としては、
所有権=物を無断で使用・収益(売買など)・処分されない権利
著作権=表現を無断でコピーされない権利
著作者人格権=表現を無断で改変されない権利
だそうですが、「所有権を持っていると具体的に何ができるの?」「表現ってどういう意味?」「音楽や映画の権利ってどうなるの?」「著作者人格権と著作権って何が違うの?」といったところまで噛み砕いて説明していただくことで、難しそうな法律の話も理解しやすいものとなっていました。

また、事例編の中には
絵画教室(あるいは福祉事業所)で描いた絵の著作権・所有権は誰のもの・・・?
作品を貸し出すときに気をつけておくことは・・・?
アーティストの作品を使ってグッズを作るときにはどんな契約書を交わせておけば良い・・・?
といった、より障害のある人たちの表現活動に関わる現場で考えるようなことも想定されていました。

日常的に作品を制作する分には著作権に神経質になる必要はあまりありませんが、売買やレンタル、商品化といった金銭が絡む(辻さんの言葉を借りれば「チャリンと音がする」)場合にはきちんとした契約を結んでおくことがトラブル回避に役立つそうです。

最後の質疑応答では、「こういう場合にはどうしたら良いのでしょうか」「自分の意思を表明するの難しい方に対しては」といった福祉の現場ならではの悩みが続々と挙がりました。

著作権の問題というのは、明確に「ここまではOK」「ここからはNG」と境界線を引くのが難しい問題であり、グレーゾーンも多いようです。今回のセミナーで学んだような基本的な考え方、原則を頭に入れた上で、現場できちんとコミュニケーションをとっていくのが支援者には求められるのだと思います。

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